クリニックを訪れる日は、いつもより少し、自分のからだが気になる日。何を話そうか、どう伝えようか。診察を待つあいだにも、頭の中ではいろいろな言葉が行き来する。そんなとき、腰をおろすのと一緒に、肩の力もそっとおろせたら。築地駅前内科・婦人科クリニックでは、医療の場に求められる端正さに、日常のくつろぎを重ねることを考えた。

空間の中心となるのは、木目の大きな受付カウンター。水平に伸びる輪郭が、訪れた人を迎え、空間全体に落ち着きを与えている。そのまわりを、あたたかな色合いの壁と、ヘリンボーンの床が包む。整然とした構成の中に、木目の濃淡や壁の細かな表情を添えることで、きちんとしていても、かしこまらずにいられる場所を目指した。

床に連なるヘリンボーンは、この空間の穏やかなリズムになっている。受付や扉のすっきりとした木目に対して、足元では斜めの線が繰り返され、視線に小さな動きを生む。色数を抑えながら、単調にはしない。座って待つ時間にも、ふと目を向けられる表情を大切にしている。

光は、壁の上部やカウンター、ベンチの足元にまわした。壁面をやわらかく照らし、家具の下に明るさを添えることで、大きなカウンターや長いベンチの量感を軽やかに見せている。受付のそばには、丸い光のペンダントをひとつ。直線で整えた空間に、その丸みが少しだけ愛嬌を添える。

窓辺には、カーテン越しの光を受ける長いベンチを設けた。街の気配を薄い布でやわらげ、落ち着いた色の座面とクッションを並べている。待合室にも、家の窓辺でひと息つくような居心地を。きちんと並んだクッションは、どこか行儀がよいけれど、座る人にまで行儀のよさを求めない。少し楽な姿勢で、自分の順番を待っていてほしい。

診察室の扉には、丸みを帯びた文字を添えた。行き先を伝えるサインも、空間の印象をつくる大切な一部になる。木目の扉に載る文字のやわらかさや、受付の院名にのぞく小さな青が、穏やかな色調の中で、さりげない親しみを生んでいる。

からだのことを話すには、少し勇気がいる日もある。その最初のひと言を、空間からもそっと支えたい。木目、布、光、文字。それぞれの表情を丁寧に整えながら、訪れた人が気を張りすぎずに過ごせる場所をつくった。